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2014年XL883Rをインジェクションチューニング

 

 2014年式 スポーツスター

外観で判る変更点はブレーキキャリパーの変更・・フロントがフローティングの2ポッド ディスクもフローティング リアは対向4ポッドでマスターも変更となり、見易くなったスピードメーターが好ましい。新しくなった2014年スポーツスターを料理していく。では、新しくなったスポーツスターをじっくり、見ていくとする。

 

□ チューニング 前 チェック

 分かりやすい変化以外にもスポーツスターは外観では判りにくい変更点があり、BCM(ボディコントロールモジュール)が搭載されCan-bas化されたりと電装系で大きな変更点がある。そうするとこれまで通りに対応出来なくなってくるのが通例で、今回も同様でした。6ピンのデータリンクコネクタにパソコンとの通信ケーブルを差し込む

 2014年モデルではエアエレメント形状も変更されています。これはなかなか期待できそうだ。

□ 試乗と確認

 試乗の際にこれまでの(インジェクション)XL883とは明らかに異なるところを3つ、見つけた。

ひとつは低速トルクの落ち込みが元々無いところ。ストックでトルクの凹みがなくなったのはとても良いところだが、マフラー交換などで要チューニング状態になった際に、中には知らずにそのままで走るユーザーで、以前では見られなかったような不具合が起こるのではないかと危惧するところでもある。
ふたつめは、巡航時2000回転~3000回転の間でブルブル・・ブルブル・・と快適ではない振動がハンドルに伝わり、心地良くない走り心地があった。
みっつめは、冷間時エンジンを始動すると、1600回転を指している。念のため診断機を用いて確認すると以前は1400回転ほどのDesired Idleだったものが、2014年からは1600回転でのDesired Idleとなっていた。

□ チューニングツールの選定

コンピューターを交換するフルコンというのも、良いこと尽くしの謳い文句に目が行きがちではあるが、少し冷静に考えたほうがよいと思う。この度チューニングに用いるものはTTS マスターチューンを用いる事にした。こちらは安定性が高い純正コンピューター書き換えタイプ(リフラッシュタイプ)となる。

弊社が他にご用意している選択肢でUSBタイプのBBT・ブラックボックスチューニング(ダイレクトリンク・フラッシュチューナー/FlashTuner)もご案内しているが、今回あえてTTS マスターチューンを用いたワケ。

基本となるインジェクションチューニングを行うのであればBBT・ブラックボックスチューニング(ダイレクトリンク・フラッシュチューナー/FlashTuner)これで十分。だが、今後どのような展開が望めるか、またはどの方向に振っていくかまだ定まっていない。要するに同じ純正コンピューター書き換えタイプでも調整可能項目に相当違いがあるという事。

このような状況であれば、多数調整可能項目があり、様々な設定が可能な”TTS マスターチューン”を用いたチューニングにしたほうが無難であると判断し、この度の2014年スポーツスターはTTSでチューニングする事に決めた。

□ Save ECM Calibrationと純正状態の確認

 

 早速2014年XL883Rとのコンタクトを試みるも、Can-bas化された御陰で通信速度がすこぶる速い。オマケ程度ではありますがこのTTSを初めてハーレーに"接続"したときに行う事をザッとご紹介。

ECMとの接続ができ、まず行うのがECM内部に存在する純正データーを吸い出して保存。チューニングのデーターは"純正データー"を吸い出した後に行っています。この吸い出したECM内部に存在する"純正データー"は、今後、純正の状態に戻す必要が生じた際、いつでも元に戻せるようにするための大切なデーターとなります。


2014年のスポーツスターの純正時の動作確認も行い・・・

45ディグリーのオリジナルマップをECMに送り、チューニング開始、となる。

チューニング開始

燃料調整について

 

アクセル全開時のラムダ値は過不足なく決して悪い値ではないが比較的エンジン負荷が高い領域でもクローズドループでの補正を行っていた。必要以上に広い領域でのクローズドループは量産車特有の機械的な個体差を取り除く事が目的であり、今回のようにシャーシダイナモに載せ専用のマップを作る場合は、誤差を含めた単一車両のサンプリングを行い体積効率値を合わせていく事が出来る為、誤差まで含めて考慮する必要はない。

 必要以上に広い領域でのクローズドループ状態は解除し、走りに適したラムダ値にそれぞれ設定した。個別にダイノに載せてマップを作成する場合、設定してもその値からハズれる事は無いが、念のため設定したラムダ値と実測A/F値を確認する事は怠らない。

点火タイミングについて

 これについては低回転~中回転の低負荷~高負荷にかけ、大幅に見直した。特に、負圧領域からの点火タイミングを丹念にチェックし純正に対してマイナスの値を加え、低回転の高負荷時にはハーレーVツインらしい走行フィーリングも意識し慎重に進めた。

走行フィーリングについて

 航時2000回転~3000回転の間でブルブル・・ブルブル・・と快適ではない振動がハンドルに伝わり、心地良くない走り心地があったが、これを取り除く事にもメスを入れ、解消するに至った。

アイドリング

 1600回転でのDesired Idleは2014年モデルのスポーツスターから変更となったところの一つであり、これが意図している事は冷え性とも言えるスポーツスターエンジンを、冷たい状態から素早く目標の温度にまで上げる事にある。その為、けたたましいからといえ、エンジンが温まりきる前から低いDesired Idleの設定にはするべきでは無く、その意図については重々承知してはいるが、それにしても忙しない感は否めない為、問題が出ないレベルで回転数を再設定した。

総括

 弊社シャーシダイナモ ロールオン測定結果をみても馬力で5馬力、トルクで0.64kg-Mと、意外なほどの差が生じたがこれは狙ってパワーを上げるよう取り組んだものではない、というワケは、この度のチューニングの目的は、あくまでフィーリングアップであり、自然とついてきた出力差である。出力アップは手っ取り早くマフラー交換、と行くところではあるが純正でもまだまだ見込みがあるな、と言ったところである。