ハーレーの水没車について。

先日の記録的豪雨にて、各所で氾濫が起き、その結果愛車が浸かってしまう。
 
もう最悪の事態を想像するかと思います。
 
 
私は以前にも、平成11年の6月豪雨の際、五日市にて起こった土砂災害で流されてしまった車両を見たことがあります。納車間も無く3ヶ月という。。。
 
土砂災害のエネルギーは大変大きいものだと、この時思い知ることに。
 
細かい砂に覆われ、「発掘」されたときはフレームは大きくひん曲がり、ホイールはぐにゃぐにゃ。金属が飴細工のごとく、変わり果て、原型は留めていなかった。燃料タンクも、シリンダーに、プライマリーケース、2つ備えたデロルトキャブレターの一つ、これらは割れてしまっていた。こうなると、修復は非常に困難。
 
 
ですが、浸かってしまっただけなら、曲がったり割れたり無くなっていたりすることは稀。
 
 
水没後、最も大事なのは、エンジンを始動させない事。
 
これは業界では基本中の基本ですが、知らないと、いつもの感じでやってしまう、ある話です。
 
 
ピストン上部に一定以上、液体があると、ウォーターハンマー現象が起き、クランクが逝かれてしまいます。
 
どこまで浸かってしまったか、わかっているなら尚更です。
 
 
エアクリーナーまで浸かると、エンジン内部に入った可能性を疑います。
 


 

この車両は、燃料タンク上まで浸かってしまいましたので、エアクリーナーまでは到達しています。
 
そこで、スパークプラグを取り外し、内部をスコープで覗くも、内部はカラッカラ。
 
このお客さんは、本当に運が良い。
 

スロットルバルブから覗くも、偶然にも前後インテークバルブが閉じている箇所でエンジンが停止していたのが分かり。

インテークバルブ上部まで泥がいましたが、ピストンや、エンジン内部への侵入は防げていたと見受けられます。これは不幸中の幸いです。
 
 

ECMやBCMなどのモジュールは無事。相当高い位置まで水没していたが、復活の可能性は十分にありそうだ。
 
とはいえ、細かい砂が非常に厄介なもので。隅々に手を加える必要があると考える。
 
この車両のように、タンク上まで浸かると、ミッションから水が侵入し、メインシャフトを通りプライマリーへの水の侵入を許してしまう可能性が高い。これはスポーツスターでも同じ。スポーツスターはミッションとクラッチが一つの部屋になっているので可能性ではなく、確定です。
 
復活の可能性は十分にありそうですが、実際の車両を目の前に、一度浸かってしまうと各所の腐食のスピードは異常に速い様に見受けられます。
 
直すのであれば、早く行動しなければなりません。
 
この車両は徹底的に分解し、組み直すという打ち合わせにて、快諾して頂きました。
 
内容が内容だけに。これから引き続きこの車両の進捗を綴っていくことはないですが、お困りのお客様、どうぞご相談ください。
 
 
Posted by M.Yasuura