通販サイトに掲載前のシリンダーヘッドを先行紹介


 
弊社ECサイトに掲載前のシリンダーヘッドを先行紹介。

2003年モデルに搭載されていた車両から取り外した883純正シリンダーヘッドです。

標準適合は1991年から2003年まで。ヘッドブリーザー式になっている年式です。
 
1986年から1990年までに用いる場合はヘッドブリーザー式になるため、ロッカーカバーを1991年以降のものに改め、エアクリーナー周りもヘッドブリーザー式にすることで利用可能。
 
 
 
伝えたいポイント7つ

・パウダーコートにて装い新たに
・エギゾーストスタッド新調
・新品バルブ
・ヘッドガスケットと面する箇所の平面研磨
・シートカット
・コニカルバルブスプリングで高回転対応
・最新のVitonステムシール採用
 
 
この商品は883のままで使うも良し。
1000ccにボアアップすることでエンジンを回して走るのがより一層楽しくなるようになりますので、それに向けての提案商品です。

ハーレー界隈ではカムの種類が云々、ピストンが云々圧縮比がなんぼ、と語られることが多いと感じておりますが、要のヘッドの状態はあくまで「いいだろう」の仮定で済まされています。きちっと圧縮が保てるかどうかはヘッドが担うこと。ここを確実なものにすることはエンジンチューンではとても大切な要素です。ここが整うだけで、カムもピストンも弄っていなくてもパワーアップする、なんてことも実際にあります。排気量が大きいほどその差は顕著。
 
 

 
 
 
 

元はシルバーの純正品でしたがホットロッドブラックを纏い装いを新たに。弊社のパウダーコート部門にて施工したものです。当時のXL883Rと同様の雰囲気とご想像ください。
 

また塗装時にエギゾーストスタッドを抜き出し新調しました。
 

こちらの新品バルブはワンピース構造のブラックダイヤモンド仕様となっており、ニッケルメッキを凌ぐ耐摩耗性が特徴です。よほどカーボンが堆積してなければガイドの摩耗はさほどなく、摩耗はバルブ側です。新品にすることでリセットをかけている。
 

また純正ヘッドガスケットにより腐食が起こりヘッドガスケット面に腐食跡が残ることは珍しくなく、それをリセットするためにサラッと平面研磨を行っている。腐食を防ぎ、またより高い性能を有す3ピース構造のマルチレイヤースチールのヘッドガスケットを使うことでそれらは再発を防ぐことができる。
 

弊社内製設備によりシートカットを施している。

内燃機屋さんでも旧モデルを導入しているところが多いのを知っているが、その製品の最新版(2023年3月に導入したもの)

ヘッドのシートカットは以前からNewayの製品を用いて行ってきた業務だが更なる追求の結果こちらの設備を導入するに至り、MIRA製(ミラ)と表現されますが正しくはMINELLI(ミネリ)社の製品をスイスより取り寄せました。
 

この設備による特徴はめちゃくちゃヘヴィーで分厚いスチール板を使用した堅牢な土台に対し、VGX-21バルブシートリフェーサーに設けられた強力な電磁マグネットでガッチリ固定された状態を作り出した上で、3面同時カットが行えるカッターを用い、精密にシートカットが行えることにある。

シートカット後にバキュームテストを行い切削面とバルブとの密閉状態が確認でき、仕上がりが如何なものかすぐにわかる。答え合わせがすぐにできるということですね。
 

締めにバルブスプリングの交換です。
この交換は「高回転に対してのバルブの追従性向上」にある。
 
しかし、安易に強化型と呼ばれるスプリングは採用しません。その理由はスプリングを強化することでそれらを支える箇所へ負担を強いるため。具体的にはカムシャフト、油圧タペットです。

バルブへ動きを伝える動力伝達はクランクからピニオンギアを経由しカムシャフトへ伝えられ、カムシャフトの山の動きを油圧タペットローラーがプッシュロッドへ伝え、ロッカーアームを経由しバルブへと伝えられます。
 
そのうちバルブスプリングはバルブが開いて、閉まる、という動きを確実に行うために設けられていますが、強化するにあたって必要となった場合というのは、サージングという状態が起こってしまうことを防ぐ目的で用いられています。

スプリングの強化はシンプルにバルブを押すという動作にパワーをロスってしまうこともありますし、先ほど記述した通り、負担を強いられる部品がありエンジンのライフにも大きく影響します。その際たるものが従来ハーレーが販売していた車両に載せていたSE110というエンジンがそれです。ここでは省略しますがSE110にはトリプルスプリングが採用されていてカムシャフトやタペットへ負担を強いていたことで故障につながるネガな面が付きまといました…。
 
 
 
….ではこのヘッドではどのようなアプローチを行なってるかというと、スプリングの形状が従来のものと異なり不等ピッチスプリングの円錐形をしており、ダブルスプリングからシングルスプリングへとなり、底面が広く、上にいくにつれ狭くなるのが形状的な特徴。これをコニカル・バルブスプリングといいます。
 

この形状にすることでバルブを構成する中でかなりの重量を占めるバルブスプリング トップカラーのサイズを小さくできます。ではコニカルバルブスプリングにするとトップカラーにどの程度の重量差があるのでしょう。見てみます。
 

当時の純正品のトップカラー
 

コニカルバルブスプリングのトップカラー。半分ほどダイエットできてますが、肉抜きして危険を伴いながらのダイエットではなく剛性もありマッチョになりつつもスリムになっている。構造的にコンパクトであってもトップカラーの剛性に問題がない形状あるのがコニカル形状のバルブスプリングの特徴。
 
 

スプリングテスターを用いて圧力変化を実測したデータと照らし合わせながら比較しましょう
 
 

まずはこの二つの比較です
 
 

青が2003年純正スプリング。赤がコニカルスプリング。この両者の開きはさほど差はなく、コニカルはストロークが一定を超えると純正のものより圧力は低く出ているのが特徴。
 
 
では一般的な強化スプリングがどんなものなのか、このグラフにバルブスプリングの強化版で従来最も使われていたであろう、S&S 640リフト対応サイドワインダーを加えてみます。
 
 

緑のグラフは50mmの初期値からグッと数値が上がってしまいましたね。初めから終いまで結構なテンションがかかり続けています。
 
 
 
 

ちなみにこの緑のグラフの曲線は実はSE110に搭載されていたバルブスプリングとほぼ同じ線を辿ります。↑の写真はSE110のインテークバルブです。
 
この巨大なバルブにセットする為にしても強烈なのに、883の小さいバルブに必要なわけが無いですね。
 
ということで、長くなりましたが昔カタギの硬いスプリングを用いる手法ではなく軽量化によって、より高回転に対応する仕様変更を行った解説です。
 
 
補足までに
このスプリングはビッグツインは1984年から2004年までのエヴォとツインカム。スポーツスターは1986年2003年まで使うことができます。

エヴォとツインカムって2004年まで共通のバルブを使っていたのです。スポーツスターは2004年から、ビッグツインは2005年から7ミリステムと、コニカルスプリング仕様へとなりました。
 
 

あ、あと。
最後にバルブステムシールは高級なものを使ってます。
 

青いVitonのは使用過程で抜けやすいのですがその心配がないものです。本職さんで青いVitonが抜けた経験ある人結構いるんじゃないですかね。
 
そういうこともあり、弊社では5/16バルブステムに対して青いVitonのバルブステムシールは基本使わないもの。ですが、たまーにバルブガイド変えられていて丈が短いものにされてしまっている時に仕方なく使う為にも在庫で持っています。
 
エンジンの中に入れて使うものは少々高くても絶対の信頼がおけるものを採用したいですね💪
 
 
この記事を参考に、ご自身のヘッドをどうしようか、ちょっと参考になったのなら幸いです。

追記 20260708
掲載しました
https://fortyfive-degree.ocnk.net/product/1871
 
 
Posted by M.Yasuura