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Full Tune CV - 開発秘話 -

□ Full Tune CV - CVキャブレターチューニング -

CVキャブレターの研究開発、フルチューンCVのコンセプトのお話です。

ここ数年で、皆さんの意識の中でCVキャブレターがかなり見直されてきたように感じます。

過去 新車購入と同時にキャブレター交換し、軽視されがちだったCVキャブレターに対するイメージを払拭するかのように、Full Tune CVへの依頼・注文が増えています。一方でFull Tune CVに対する理解が今ひとつ釈然としない方もいらっしゃるようで、システムの根本から、あるいはFull Tune CVの特徴を具体的に問われるユーザーも増加しております。事実、当ホームページ上にて十分な説明が足りず、説明不足な所があるのも否定できません。それもあり、メールやお電話でのご質問が多く、正直 個別の説明対応にかなりの時間を有し、それでも満足に伝えられない部分もある様で、改めてホームページ上にて、CVキャブレターに関するものも含め、Full Tune CVの説明をする事にしました。

“読まれるユーザーはキャブレターにあまり詳しくない”ものと踏まえた上で、できるだけ解り易い様、解説するようにします。

Full Tune CVとは、純正で採用されているCVキャブレター(以下、CVに略します)に加工を施し、純正システムに束縛された状態から解き放つことで、本来CVがもつ素晴らしい性能を引き出すキャブレターチューニングです。

純正CV(40mmCV)だけに留まらず、ノウハウを応用し、スクリーミンイーグルからリリースされている44mmCVにも対応しております。

純正システム

Full Tune CVをご説明する上で、「ハーレーダビッドソン純正」のCVとは、一体どういうものなのかをまずお話しなければなりません。

純正エンジン・純正エアクリーナー・純正マフラー・純正イグニッション・純正キャブレター(インジェクション)は総じて純正システムです。通常、新車で購入する純正状態とは万人向けに設定した可も無く不可も無く、誰にでも問題なく乗れるように配慮された結果なのです。

それともう一つ、近年厳しくなりつつある排ガス規制。この両面をクリアするシステムの具体化が純正システムと考えれば分かり易いと思います。

その純正システムを稼動させる歯車の一つに、純正で採用されているCVがあります。

ハーレーがなぜ、CVを採用しているのか。
1990年以降、エボリューションエンジンからツインカムエンジンへモデルチェンジしても、ハーレーの全車種で採用しているキャブレターは、すべてCVです。純正で採用されているキャブレターは世界的にも有名なキャブレターメーカー、ケイヒンキャブレターが、ハーレーから依頼を受けて製作しているものです。

ハーレーが拠点を置くウィスコンシン州の近くにはS&Sがあり、近辺にはキャブレターのメーカーは多く存在しているにも関わらず、わざわざ遠く一万二千キロも離れた日本のケイヒンへハーレー用のキャブレターを依頼しているのか、答えは明確です。ケイヒンでなければ、ハーレーが求める純正キャブレターの内容を具体化することができなかったからです。言い換えてみれば、ハーレーが考える、自社の製品に最も適したキャブレターとして選びぬかれたものがCVなのです。

純正システムという枠組み

前述の通り、純正CVとは純正システムに組み込まれた歯車で、そのシステムを稼動させる為に作られたものであり、そのシステムのどれかに手を加えた場合、同時にキャブレターにも手を加えなければなりません。

しかし、純正状態のCVは純正システムという枠組みから抜け出す事は容易ではありません。

一言に言えば「セッティングができない」

通常、キャブレターという物にはジェット (メインジェット・スロージェット) は最低限備わっており、それはCVにも備わっていますが、そのジェットの番手を大きくしても、小さくしても、目立って変わりはありません。目立って変わりはなくても、若干の違いはあります。それで満足しているのでしたら、まだいいとしても、それ以上求めるとなると、多くの場合は調子が悪くなってしまいます。

いわば、純正CVはブラックボックス状態なのです。ある範囲の中で使う事を目的としたものですから、万能ではありません。その状態をなんとかしない限り、純正システムに束縛されたままです。こういった状態である為に過去、純正キャブレターは軽視されがちでした。

Full Tune CVとは

Full Tune CVとは、純正システムに束縛された状態のCVを、その束縛から解き放ち、本来CVキャブレターとしてあるべき姿に仕立て直すチューニングです。

その本来の姿は、いままで純正CVにあったものとも、他のチューニングアイテムを組み込んだCVとも一味も、二味も違う乗り味。
CV本来の乗り味は、爽やかな走行感であり、実にトルクフル。むらがなく、スムースな立ち上がり。乗りやすくても、パワーがあるとイメージするのが一番想像し易いと思います。

Full Tuneと聞くと、「Full Tune=大改造」と連想され、誤解を招きやすい言葉ではあります。
45Degreeが考える「Full Tune CV」に名づけた「Full Tune」とは、身近にあるもので例えるとラジオみたいなものです。ラジオがチューナーと呼ばれるように、指定された周波数に合わせなければ、電波を捉えることができず、良い音でも聞くことができません。大きく移動すると、また各地域に合わせた周波数に合わせなおして、という事に例えることができます。

純正のCVは、純正システムに束縛されている為に、先ほどのラジオで例えると、他の周波数には合わせることができない、固定周波数状態に例えることができます。

純正CVが純正システムに束縛された状態であったのに対し、その束縛から解放されて、マフラーやエンジンに手を加えた場合にもその各仕様に合わせた調整ができるようになっているからこそ、Full Tune なのです。

CVをチューニングすることの難しさ
ダイノジェットキット/サンダースライドとの違い

一般的に行われ、CVをアレコレと手を加えている方の多くが行っていることはチューニングと呼んで良いものなのかと悩んでしまう。

『マフラーの抜けを良くしたから、とにかく純正のセッティングは薄いからもっと燃料を濃くメインジェットは純正より4番手位上にしてエンジンに送り込み、で、スライダーの上がり方はとにかく軽いほうがいいでしょう!ニードルは純正を使ってもワッシャー入れて嵩上げで走りはバッチリ(かな?)。』

スライダーの上がりを軽くする為にサクションホール径拡大+柔らかいスプリング・もしくは純正スプリングカットに、1.5mmほどのワッシャーをニードルに入れ、ニードルの嵩上げ。教科書に書いてあるのかと思うほど、この組み合わせは、結構な頻度で目にします。とにかく、純正のキャブレターをどうにかしようとしているのでしょう。

マフラーを交換したからといって、必ずメインジェットサイズをやたら大きく(濃く)するのも間違い。いくら、今の状態では調子やレスポンスが悪いからといって、サクションホール径を必要以上に拡大してスライダーの上がりをスカスカに軽くするのも間違い。それに柔らかいスプリングを組み合わせるのは大間違い。ニードルの嵩上げなど、上げただけでニードルのプロフィールが全体的に変わってしまいます。明確な理由がなければする必要もありません。

これらのことは雑誌の記事やインターネットの掲示板などで交わされるお話だけではとても判断できないと考えてください。

多くのキャブレターを触り、セッティングし、チューニングし、得られた情報を理論的に統合され、理解をしていなければ、純正システムから開放されたチューニングCVを作ることは出来ません。それだけチューニングが難しいキャブレターなのです。

単純に中間域~高回転域でのパワーを出すことは、CVを使っても、実は比較的簡単な事です。体感的に違いを出すことも容易です。パワー狙いだけで済むのであれば、こんなには苦労することはなかったはずです。

Full Tune CV の基本コンセプト

元々、CVに対しての考え方や見方その物が初めから違っていたので、CVのチューニングを本格的に始めたきっかけも違っていました。「CVを使って他のキャブレターに負けない位のパワーをだそう!」ではなく、「調子の良い、乗っていて楽しいキャブレターを作ろう」でしたから、当然出来上がったものも他の物とは違った内容のチューニングCVが出来上がりました。

今現在のコンセプトは、

「扱いやすさとパワーの両立。CVらしさを残しつつ、CVならではの爽やかな走行感を追求する。」です。

このコンセプトの意味している事は、簡単そうに見えますが、非常に難しいもので莫大な時間と実走行を費やしました。なにしろ、CVは他のキャブレターにはない、エンジンから発生する吸入負圧とスロットルバルブでコントロールされているスライダーがあるからです。

今までの経験から色々とトライ&エラーを繰り返し、時間の合間に日々シャシダイナモ上でデーター取りに明け暮れた時期もありました。思うような良い状態の設定ができあがるまでにデーター取りで100個近くCVを使ったのですから、その研究期間は大変面白いものでした。

結果として、そつのない自然にパワーアップが可能となるCVへと生まれ変わりました。CVのチューニングで、最も大切な事として気がついたのは「バランス」です。

この考え方の大元は「良いセッティングを出すことができれば、パワーアップはする(エンジンが消化できるだけのガソリンをタイミングよく供給する。それがベストなセッティング)」。この良いセッティングこそ、即ち「バランス」です。

バランスを整えることができたからこそ、本来CVがもつ素晴らしい性能を引き出す事もできました。Full Tune CVは、純正システムから開放させ、その上でこの「バランス」を追求していった結果が形になったものです。そのバランスを整える事で、他のキャブレターではあり得ないほどの綺麗なパワーカーブを描き、馬力もトルクもFCRに匹敵するほどの数値を出してしまいました。

どこか、部分的に触ったのでは、簡単にバランスが崩れてしまいます。触ったところが3つあったとします。それがそれぞれ30点ずつ上がるものとすると、単純に足し算で90点となると思われますが、実は違い、それぞれがかみ合わないような状態だと、それが50点だったり、場合によっては30点以下の赤点ということも十分にあり得ます。相乗的にシステムが噛み合い、良い効果が得られなければ、バランスの良い状態に持っていく事はできなかったのです。相乗的にシステムが噛み合えば、それが100点にも120点にもなります。

先ほど書きましたが、スライダー1つ取ってみても、あれほどの意味があるものです。それが、常に上がり下がりして、他の要素とも複雑に混ざり合っているのですから、システムの関連性を詳しくここで書いても、それが果たして100%理解して頂けるか頂けないかも、こちらでは解りません。

ただ1つ、お伝えしておきたいことは、作っている自分達が使いたい、誰の真似をするわけでもなく、新しい感覚の、乗っていて「本当に面白い・楽しい」、自信を持って「良い」と言う事のできるキャブレターを、もう1つ創ってみたかったのです。これは完全に商売抜きでのお話です。いままで、色々なキャブレターを付けて、走って、味見してきたからこそ湧いた欲だったのかもしれません。

あんなに苦労してでも、創り上げた意地は自分で使いたかったから。すべてはそこにあります。つまり、元々、売りに出そうとして始めた、チューニングCVでもFull Tune CVでもありません。自分達だけでコソッと楽しみで始めた事なのです。

だからこそ、自分で使って楽しくないものは創りたくは無かった。当然、ハーレーらしい鼓動感は必要、同じCVでも、中身の設定次第ではエンジンがモーターみたいに回るなど、驚くほど特性が変わってしまいます。鼓動感がなく、モーターみたいにエンジンが回るようでは、感性に訴える感覚が失われ、楽しくもなんともありません。CVのシステムを崩す様なチューニングをしては、調子が悪くなる元にもなりかねません。それでは、わざわざCVを使う理由も根拠もなくなってしまいます。

Full Tune CVとは、心底、ハーレーが好きで、CVに惚れた人間が創ったチューニングCVとして受け止めてください。

少し話しが反れてしまいました。次は本題に入ります。


Full Tune CV 【 純正派 】

<基本パワーデーター/純正派>(車両はXL 1200c・2003年)

〇 すべて純正状態。基準にしてください。(ピンクが馬力、5,000rpmで40ps・赤がトルク、3,200rpmで7.0kg)

〇 純正の状態からFull Tune CV 純正派に変更。(水色が馬力、5,200rpmで55ps・青がトルク、3,700rpmで8.5kg)

〇 純正派のまま2in2スーパートラップ+純正A/CリプレイスK&NハイフローA/Cに変更。(緑色が馬力、5,200rpmで64ps・黒色がトルク、4,200rpmで9.5kg)

それぞれの数値は右側がトルクグラフ・左側が馬力グラフです。

もっと大きく比較グラフを確認する場合はこちら

純正システムに束縛された状態から解き放つことで、本来CVがもつ素晴らしい性能を引き出す事を目的としたモデル、Full Tune CV のベーシックモデル、純正派です。

これまた紛らわしい名前ですが、純正の仕様にしか適合しないモデルではありません。Full Tune CV の基本で、すべての始まりです。

内部の構成部品はすべて純正部品を使用しています。これが純正派の名前の由来です。

その純正部品を元に加工を施し、その加工を施したことにより他の機構にも必要となるリ・バランス/リ・セッティング。ベンチュリー内部をきれいにホーニングするなど、大量生産品ではできない事も、一つ一つ手に取り作業する事で可能な工程を踏んでいます。

純正システムから開放させ、解き放つことで、本来CVがもつ素晴らしい性能を引き出すキャブレターチューニングの大元が、この純正派には詰まっています。先ほど【Full Tune CV の基本コンセプト】で説明致しました内容は、まさに純正派の事を指しています。

内部の、例えば細いニードルを組み込んだり、気化率の高いエマルジョンチューブに交換するなど、ダイノジェットキットで行っているような事をするなど、「アフターパーツを組み込んであるだけ。」と誤解されがちですが、この純正派はそのようなコンセプトの元で取り組んだものではありません。

純正派は、内部の構成部品を変更することなく、同じ純正部品でも最大限活動できる環境を作ることができれば、ノーマルの持つ性能以上のCVに生まれ変わるという確信の元で、「純正システムに束縛された状態から解き放つこと + バランスを整える」 この二つを今日まで追及してきました。

詳しい内容に関しては、ご容赦ください。ですが、それでは納得がいかないでしょうから、以前シャシダイナモ上で、数値を出していた際に残したグラフがあります。実際に純正派で行っている加工で、これは、ある一部分だけ手を加えてどのような変化があるのかをグラフで解りやすくしてあるもので、本式ではない(これがすべてではない)ことを、まずお伝えしたいと思います。


 

純正派 参考データー

プリンターが不調な為、直接画面を撮影です。ご了承ください。

上に2本伸びているのは馬力曲線、下の2本はトルク曲線です。

① ジェット類はそのままの条件。丁度、3,500rpm付近より、馬力・トルク曲線 共に二手に分かれているのが読み取れます。

② 3,500rpmよりの変化は簡単に読み取れますが、2,500rpm付近にも変化があることが読み取れます。途中で曲線が途切れて読み取れませんが、そのまま横に伸びているものと推測できます。

曲線からも伺えますが、マフラー交換や、ニードル交換など、なにか条件を変えたものではありません。曲線の描き方そのものには大きな変化が無いことがその証拠です。

キャブレター内部に手を加えた効果によるもので、手を加えたことにより、3,500rpmから明らかに馬力・トルク、共に上がっているのが確認できます。しかし、一方で2,500rpm付近でも影響が出ています。片方を触ると、もう1つ触るところが出てきてしまう。何回も申し上げている通り、バランスです。この影響は、まだ未完成で一部しか触ってないことによる現象です。

純正派で求めたフィーリング

このように、純正派はシャシダイナモ上でデーター取りを重ねながら研究を繰り返してきましたが、一方でシャシダイナモでは測定できない、しにくい、2,000rpm以下の領域はシャシダイナモ上で変化を読み取ることはできません。シャシダイナモ上でのグラフが良い結果に終わっても、実際に走るのとでは、また話が違ってきます。シャシダイナモ上では読み取ることはできませんがその領域というのは実に多用する回転であり、中速~高回転域での馬力やトルクより重視されます。

この極低回転~低回転域までは、実走により割り出しています。2,000rpmまでの想定範囲は実に多くあり、実際に使用する環境に近い、峠道で行うアクセルのオンオフ、GO&STOPが頻繁に繰り返される渋滞など、様々なテストを行いました。

そして、バランスを整える事と同じくらい重視したものは、フィーリングです。

想像してみてください。

綺麗に晴れ渡る青空の下。暖かい春の陽気。景色を眺めつつ 気持ちよく流して走る国道2車線の田舎道。5速に突っ込んで、足を前に放り出し 速度は55km~60km。

Big Twinなら、心地良い回転数1,500rpm。

そこから、ちょっと、大きめにアクセルを捻って、あずりつつ、ズドドドドド・・・ ドコドコドコドコ・・・ と回転があがり、そしてアクセルを戻して減速。そしてまたアクセルを捻ってズドドドドド・・・ ドコドコドコドコ・・・。

ハーレーならではの楽しみ方です。丁度美味しい1,500rpm~2,000rpm位の間での出来事を想像してもらいましたが、この区間はシャシダイナモの曲線では正確には読み取れません。

曲線には出ることのない、楽しさやフィーリングと言われると、大抵この区間です。この、エンジンがあずりながら、優しくも力強く前に進む、CVならではのフィーリングをより高める為にも、純正派を作る段階で、あずり具合を壊さないよう、重点を置き、実走でデーターを収集して割り出しています。

決して、この「丁度美味しい1,500rpm~2,000rpm位」という表現は、イコール「もたつく」表現ではありません。行くときには、アクセル一捻りで行きますが、楽しむときには楽しむことができるという事を申し上げたかったのです。

この回転域でのフィーリングは、CV以外のFCRやHSRでは、慎重にアクセルを開ける必要があり、大きめに開けると、あっ と言う間に過ぎてしまうか、ただギクシャクするだけなので、「優しくも力強く前に進む」 この美味しさが削がれてしまいます。それは、ダイノジェットやサンダースライドを組み込んでいても同じことです。

 

Full Tune CV 純正派とは、このような取り組みで行っていることを述べてまいりました。

「扱いやすさとパワーの両立。CVらしさを残しつつ、CVならではの爽やかな走行感を追求する。」

この言葉の中に含まれる、純正派で求めた意味がご理解頂ければ幸いです。

Full Tune CV 【 TOURING 】

前頁ではFull Tune CV「純正派」について説明致しました。

次は「ツーリング」です。

まずは純正派との比較データーです。

測定車はXL1200R。マフラーは2in1。

明らかに、中速域からの馬力・トルク共に向上し滑らかになっています。しかし、ピークの馬力もトルクも純正派と大きな違いはない。そこに至るまでが速くなっているのです。


2004年1月(第四期生産)から、新たにFull Tune CVへ加えた、Full Tune CV「純正派」をベースにし、純正派を基本として上に立つグレードのモデル 「TOURING」を設けています。装着により主に変更されるのはニードル・エマルジョンチューブ・スプリング・サクションホール径です。サクションホール径はデーターに基づき0.1mm単位で仕様にあわせて拡大するかしないか考慮します。

※ 特徴・概要

TOURING は、主にエマルジョンチューブ・ニードル・強化ダイアフラムスプリング等、専用品に交換します。それに伴い、キャブレターの仕様を装着されているマフラー等パーツも加味しつつ小変更します。ガスの霧化促進効果による気持ちのよい走行感。更に、中速~高速域のパワーアップと、独特の機関車の様な鼓動間を楽しむことができます。「とことんハーレーらしさ」を求める方にはこちらをお勧め致します。いままで味わった事のない、良い仕上がりです。

特に、TOURINGはCVのスライダーの作動に注目し、CV以外では完全に不可能な事が施してあります。

それは、同時に一般的なCVチューニングの常識とはかけ離れた事でもあります。その大きな違いとは、スライダー内部に入るスプリングに違いがあります。このスプリングが、純正品より高いレートのスプリングに交換してあります。

「それでは、スライダーの上がる抵抗になるんじゃ??」

こう思われるかもしれませんが、これは先の【CVをチューニングすることの難しさ】 で 『スライダーが上がる抵抗になっているのではなく、スライダーが下に降りるときには素直に降りてもらわなければ困るからこそあるスプリングです。』と挙げている通りです。

このスライダー内部のスプリングのレートを高くすることにより、スライダーのサクションホール径を、純正派より拡大することができます。拡大すると、スライダーの上がりが敏感になりますが、スライダーが降りたい時には素直に下に降りる。こうすることにより、サクションホール径を拡大しても、スライダーは必要な時に必要なだけしか上がることはありません。そうすることで、一番、なにが目的かというと、実は鼓動感の向上にあります。エンジンから負圧が生じる度に、細かくスライダーが反応して動くのです。

全く同じとはいえませんが、違うものに例えると、追従性の良いサスペンションです。当、ホームページで紹介しているレーステックのゴールドバルブでは、その様な事がしてありますが、TOURINGも似たような考え方でスライダーの動きを考えています。それは、モデル別で変わる車重にも深く関係してきます。スポーツスターと、FLHでは100kg以上の差がありますが、スポーツスターとFLHが、同じサクションホール径であると、エンジンから負圧が生じる度に、細かくスライダーが反応して動いてはくれません。

スライダーのサクションホール径はエンジン、装着されているマフラーの具合はもちろんのこと、車重まで加味しながら設定する必要があります。

スライダーがエンジンからの吸入負圧に細かく対応することで、絶妙な鼓動感に細かいパルスを伴いながら、滑らかに・軽やかにスルスルっと吹け上がる。これがTOURINGで求めたフィーリングです。

しかし、鼓動感求めるならTOURINGがお勧めです。と、お勧めできても、必ずしもそうとは断言できません。S&SのEキャブなどは、パワーカーブでみるとはっきり言えばグチャグチャですし、CVよりはパワーもトルクも若干下です。しかし、あのアメリカを感じるフィーリングがたまらん!と言う方はたくさんいます。

ハーレーは、感性に訴える乗り物で、求めるフィーリングも人それぞれ違いがあります。絶妙な鼓動感に細かいパルスを伴っても、滑らかに・軽やかにスルスルっと回転が上がるのを嫌うユーザーも少なくはありません。

惑わすようで本当に申し訳ないのですが、これだけはこちらからなんとも申し上げられません。純正派とTOURING、どちらを選ぶかで迷われているのでしょうから、まずは純正派からステップアップしていくことをお勧めします。

Thunder Jet / サンダージェット



Thunder Jet(サンダージェット)とは高回転専用のジェットでスライドピストンよりエアクリーナー側で発生する吸入負圧を利用して供給されます。サンダージェット単体は約3,800rpmより本格的に効き始め供給ガス量は内部のジェットにより調節が可能。これによりメインジェットの役目を中速域に重点をおくことが出来ます。

純正派と、サンダージェットを組み込んだ物との比較データーです。

パワーカーブで、①としてある部分が丁度3,800rpm付近で、この地点からサンダージェットが効き始めます。サンダージェットを組み込んでも、ピークの馬力もトルクも大きな変化はなく曲線に盛り上がりが付き、そこに至るまでの曲線が滑らか。結果、速くなっています。

 

では、なぜサンダージェットを取り付けるのか。必要はあるのか。

CVキャブレターは、通常スロージェットとメインジェットから燃料が吹き出てニードルで燃料を制御しています。スロージェットは低速域を受け持っています。メインジェットは2,000回転付近より中速域と高速域のふたつを受け持ちます。中速域では、少し濃い目の状態そして高速域では少し薄めの混合気を供給しています。ふたつのジェットでコントロールしている為に制御が行き届かぬ場面が生じます。

それを避ける為に、ニードルのカーブ形状などでずいぶんと工夫してありますが、中速域は、もっとも使用頻度の多いゾーンですから犠牲にはできません。したがって、高速域でガソリンの供給が、不足ぎみにならざるを得ない考え方に到達します。高速域を考えると、中速域ではかぶり気味になり、中速域をベストにすると高速域が伸びない・・この問題はキャブレターのセッティングでは日常茶飯事に出てきます。

サンダージェットは、この問題で非常に有利な解決が可能です。例えば、本来3人で流す製造ラインが有ってそこを2人でこなしている状態は苦しい状態です。パートごとに専任がいたほうが良いにきまっています。

サンダージェットをインストールする良い点は、メインジェットの分業化が可能になる事です。今までのメインジェットを中速域専用のジェットに出来ます。新たなミドルジェットの誕生です。

そして、高速域専用はサンダージェットに任せます。新たなメインジェットの誕生です。この分業化により中速域はさらに軽く吹け上がります。高速域もさらに伸びるようになります。とてもさわやかな、そして力強く滑らかなパワーカーブを手にいれることが可能です。


シャシダイナモ上にて、CV内を撮影した物です。左からアイドリング→(4速2,000回転からアクセル全開)→2,700回転付近→4,000回転付近と3回に分けて撮影した物です。無負荷状態ではこのような状態は見ることができません。 画像をクリックすると大きい画像でご覧頂けます。

キャブレターのセッティングは足し算です。今までのスローが30とします。メインが70で合計は100とします。サンダージェットのインストール後でもそれが30+40+30になるだけで合計は100になるはずです。

また、サンダージェットをインストールすると「更に排気音が太くなった」との報告も受けています。大きくなるのではなく、太くなるとのこと。これは、比較的低回転からでも、サンダージェットをインストールした効果が出ていると判断できます。その効果とは、先に述べた通りです。

サンダージェットをインストールすると燃費がわるくなるのでは・・と頻繁に聞かれますが・・そんなことはありません。もし燃費が悪化したとしても右手で解決する問題でしょう。きちっとセッテイングがされたバイクは燃費は良いはずです。セッティングがあっていない状態の方が燃費も悪いのはデーターとしても残っています。

エンジンが消化できるだけのガソリンをタイミングよく供給する。それがベストなセッテイングではないでしょうか。したがって、バイクの持つポテンシャルを生かしきる事が出来るのでは、と考えます。

備考

純正派加工後に、TOURINGへのアップグレードも可能です。その後、サンダージェットを追加することも可能です。地元の方は、一つ一つステップアップしても面白いと思います。遠方のお客様では、一気にサンダージェットまで組み込むメニューを選択される場合が多いです。

当店の設定するオプションパーツの考え方としては、

1: フルチューン化でセッティング可と低速~中速域後半までのパワーUP

2: Touringで中速~高速域にかけての強化と純正派とは異なる味付け。(機関車のようなドコドコ感)

3: サンダージェットで3,800rpm~高速域の強化・燃料補助とジェットの分業化。

という低速域~中速域~高速域までの一連の考え方です。

 

これを噛み砕いて図解にするとこんな感じです。


ご飯があり、上になにか乗せるとカレーになり、更にカツを乗せるとカツカレーになります。でも、あくまで美味しいご飯がベース。炊き具合も重要です。これがなければ、どんなにカレーが美味しくても、カツを乗せても、その名の通り「台無し」です。

ご飯を食べて、その後カレーをかけて食べ、その後カツを乗せることも可能です。それぞれ味わえます。

 

これも、先ほどと同じ。

大吟醸を飲んだ後でも、純米酒はそれはそれで美味い。お酒好きなら分かりますよね。


 

今回、Full Tune CVの説明を更新するにあたり、どのようにしたら 満足に伝えることができなかった部分を十分伝えることができるか、かなり悩みました。結果、長文になってしまいましたが、お解かり頂けたでしょうか。長々と申し訳ございません。

しかし、十分な説明があったとしても、百聞は一見にしかずで、結局、使ってみなければ、本当の意味では理解して頂けないと感じています。ですが、前回の説明ではよく解らない、大部分のモヤモヤがこれで晴れたのではないかと思います。今回はお話できる範囲の中で、できるだけ深くまで突っ込んでお話したつもりです。

Full Tune CVの基本形ができあがり、Full Tune CVもその時々で改善しなければならない箇所はありました。インターネットで広く知られた頃のFull Tune CVと現在のFull Tune CVとで比べると、まるで中身が変わってしまっているほどです。それは飽くなきエンジニアとしての「より良いものを創る」精神であり、当然の行いです。決して悪い意味では捉えないでください。

それでは、この辺りで終わりにしたいと思います。

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