ツインカム ギアドライブ化

GDC ( Gear Drive Camshaft ) とは?

ハーレーに限っては、まことに聞きなれない用語ですが、カムをギア駆動させるという意味です。より正確にカムシャフトを動かす目的で採用され、4CAMのスポーツスターは古くからギアードライブの機構をカムカバー内に納めています。

 純正のツインカムエンジンのカムシャフト作動機構は、チェーンで駆動され、クランクからリアバンクのカムシャフトへのチェーンと、リアバンクのカムシャフトからフロントバンクのカムシャフトへのチェーン、この2つのチェーンで駆動されています。

 エンジンを始動させるとマフラー側から「シャー」とも「クォー」とも聞こえる音がそのチェーンのメカノイズです。チェーン化されているのは、それなりに理由はあり、主にメカノイズの低減です。よく聞いて比較してみると個体差があり、その音が異常に大きい事もあれば、ほとんど聞こえない事もあります。走行を重ねたツインカムエンジンの方が、音が大きい傾向にあり、チェーンテンショナーに装着されている茶色のシューの消耗具合にも影響されます。

 しかし、このチェーン機構にはなにかと問題点が多く、すべて挙げると問題にもなりかねないので、書くことは出来ませんが、今回の様にカムシャフトを交換する場合はギア式の駆動方法に変更するほうが好ましい。

 まず、ギアドライブ化の難点を挙げると、メカノイズが大きくなります。

 これはスパーギアが回る時に起こる特有のノイズで、ギアが回ると入力側と出力側の、ある歯面の噛み合いが0からいきなり歯幅全体の噛み合いとなり、どうしても衝撃的になってしまう為、それがノイズとなり現れます。

 そのノイズはカラカラ・コロコロというギア・ドライブ化したツインカム独特の音で、パンヘッドの頃にあったエンジン・メカノイズに近い音です。人によっては、それが不愉快かもしれませんし、心地よいかもしれません。感じられる差はあると思います。

では次にチェーン駆動からギアドライブ化することで解消される点を挙げます。

 

1 シューの磨耗

 まず、チェーン機構を正常に動かすには必然的にチェーンテンショナーを装備しなければなりませんが、テンショナーにあるシューがチェーンと直接当たり、チェーンを張っています。シューは非常に硬く、滑りの良い材料が使われていますが、その反面、磨耗することで出る細かいカスまで非常に硬く、これが巡り巡ってカムの直ぐ下にあるオイルポンプ内に入ってしまうとも言われています。

 シューは、大よそ1万キロで0.5mm~多い場合は0.8mm近く磨耗し、交換基準の2mmまでとなると、長く乗ろうとするユーザーからしてみれば度々エンジンを開けなければならない事になってしまいます。シューの交換も専用のスペシャルツールを多く必要とし、プッシュロッドの張りを解かなければならず、一個人が取り組むには難しい作業です。

 Gear Drive Camshaft化すると、チェーンを取り外してしまうのでシューを必要としません。よって、カム回りの消耗部品の交換でのエンジンを開ける作業はほぼ不要になります。

上画像は5万キロ走行後にギアドライブ化の依頼がありエンジンを開けた際のチェーンテンショナーシューの状態です。壊れる一歩手前で、とても危ないところでした。

2 チェーンテンショナーによる抵抗増大とベアリングにかかる負荷

 チェーンを張る為に設けられたテンショナーは常にチェーンが緩まないように、強いテンションでチェーンを押さえつけていますが、これが本来リアホイールに伝えられるはずの力を、ここで損失してしまいます。

 実際に2つのチェーンをかけ、それぞれテンショナーでチェーンが張られた状態で、回そうとしてみると、簡単に回すことは出来ません。決してスムースとは言い難く、ものすごく硬い。エヴォからツインカムに乗り換えられた方がよく言う「苦しそうに回るエンジン」の発生源とも考えられます。

 そしてチェーンに高いテンションを加えることでベアリングに負担がかかってしまいます。

 画像で、チェーンテンショナーでチェーンを押さえつける方向と、それによってカムシャフトが受ける力の向きを大袈裟に表してみました。

 テンショナーで強く圧力を加えると、カムシャフトにもその圧力が伝えられ、そうするとそのすべての皺寄せはベアリングへかかり、本来ベアリングが受ける方向ではない方向に負担が掛かってしまいます。そしてこの機構の場合、二つのチェーンが繋げられているところ、つまりリアバンク側のカムシャフトベアリングが最も辛い状況です。

 それらの負荷に対し、このリアバンク側・カムサポートプレートに圧入されているベアリングが、玉軸受(ベアリング)から、スラスト方向に掛かる荷重に対して強い円筒ころ軸受(ベアリング)に変更されているので、玉軸受(ベアリング)では無理のかかる方向への負担が掛かってしまっても、耐えられるよう、対策は施されています。

 ギアドライブ化すると、テンショナーを外してしまうので、純正チェーンドライブの時に起こっていた問題の数々を解決できます。また、スラスト方向への負荷もなく、限りなくスムースに回るのでフリクションロス軽減にもつながり、潜在的なトラブルからも開放されます。

ギアドライブ化する意図

 抵抗が減る・ベアリングへの負担軽減などを含めた説明をしましたが、そもそものギアドライブ化する意図は、ストックのチェーンドライブは、より高性能なエンジンに仕上げるには不向きと判断している為です。

 ストックのチェーンドライブ機構のままだと、何をするにしても局所的(ベアリング)に負担が増す一方で、走行中のカムベアリング破壊を招きかねず、もし破壊されてしまえば、非常に硬い金属片がエンジン内を循環し、ピストン・シリンダーは勿論の事、あらゆるところが削れ・・・最悪エンジン交換を招きます。

 また、純正ツインカムエンジンで使用されるチェーン駆動方式では高いリフト量を持つカムと組み合わせると、カムシャフトの山と山が向き合う形で回転するため、カム同士が接触しないようにしなければならず、リフト量などに制限があります。ギアドライブ化すると、カムの山が向き合うことは無く、選択幅がある利点があります。

 

 チェーン駆動では、高いリフト量を持つカムと組み合わせたり、高性能バルブ・スプリングを使用するとき、高い回転数での正確なインテーク・エグゾーストバルブの作動を制御するには適切ではありません。ギアドライブ化すると、高性能化するためにも必要なバルブ回りの作動正確性を向上させる事ができます。

 つまるところ、ツインカムエンジンの癌がチェーンドライブであり、そこが改善されなければ、ロングライフなエンジンにも、Goodなエンジンにも、仕上げる事は到底難しいと考えています。その為、純正より改良されたシステムが必要でした。

まとめ

 どんなエンジンでも、エンジンのチューニングの第一歩はカムから入るのがごく一般的です。そして、『カム交換=ハイカム』このような図式となり、ハイカムと聞くと「山の高いカムでしょ?(つまりリフト量)」と連想されるのも一般的です。

 カムシャフトは主にリフト量・作用角・オーバーラップからなり、これらの設定次第では良く回るエンジンにも、トルク重視のエンジンにもなり、とても大きな鍵を握る存在です。

 アメリカ市場でも様子が変わり、一昔前の様な「上でよく回る」パワー重視(最高馬力・最高トルク)なカムシャフトは無くなりつつ、それに代わり、より乗り易さを優先し、高回転より、低・中回転でのレスポンスやトルクを重視させる傾向にあります。

 パワー重視のカムは、シャシダイナモで計測すると高い馬力を発揮するが、その回転域は普段滅多に使う事も無く、殆ど自慢に近い数値になってしまう。下でのトルクの薄さによる低回転域での乗りにくさ、不安定なアイドリング、異常に回りたがるエンジンに急かされ、本人も気が付かないうちに高回転まできっちり回して走ってしまい、高燃費にエンジンの痛み方の激しさといい、ストリート向けのチューニングとはとても言い難いものです。

実際には乗り易さ優先のカムを選択した方が良い事も多く、低回転寄りで素早くトルクを立ち上がらせることで、とても乗り易く、アイドリングも安定し、エンジンに急かされることもありません。乗り易さ優先としながらも、パワー重視のカムと比較しても劣らない走りを見せ、実際に2台で走行してみるとエンジンを回さなければ走らないパワー重視より、下の押し出しが強い乗り易さ優先カムの方が「速い」一面も持っています。

 しかし、なんでもかんでも同じカムを勧める気もありませんし、エンジンの仕様に最適なカムシャフトを選択しなければなりません。

 ツインカムエンジンの出来は優秀・完成度も高く、求められるものは、必要最小限にして、最大の効果を出す。そしてロングライフなチューニングです。それが、このGear Drive Camshaft化とカム交換です。

 先ほどからカムだけを交換する前提での話で進めてきましたが、”ライディングスタイル”・”エンジンの仕様”に対して、最適なパーツを選択することが大切だということがひとつ。

 やはり純正に比べてパワーがあってこその「面白い」や「楽しさ」・「乗り易い」であり、多くのユーザーが望むべきチューニングは“ストリート向け”のチューニングであり、ハーレーらしさを消さないよう、むしろそれをより強調させるものとし、絶対的なパワーよりも気持ちの良い軽快感なのだということを、様々な経験を通じて強く思うようになった次第であります。

ENJOY ツインカムエンジン!

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