知っておいて欲しい 塗装の事 「実は黒は難しい」

知っておいて欲しい 塗装の事 
 
その1「実は黒は難しい」

 
 
知っておいて欲しいとか偉そうにタイトル付けてしまい恐縮ですが、あくまで私が知りうる範囲の事。ご了承ください。
 
 
ブラックアウトされ、黒い外装を纏った車両。
 
近年物凄い増えました。
 
 
故、「単色の黒で塗ったら、いくらかね???」はごく普通の会話であり。
 
ただの黒で、まるっと塗るだけだから、高くないだろう…の心積りの中
 
想像以上の価格を提示されて、たかー!!! となったという話も ちょこちょこ聞く。
 
 
 
 
黒く塗るのに
 
ビャーッと
 
ガーして
 
ウォリャーっと
 
ブッシャーで
 
オワッタアアァアアアア!!
(終わった)
 
…とこんな感じで擬音で表現できるほど荒っぽく黒い塗装が出来上がってるのなら、簡単だし、安価だ。
 
 
 
 
これ、逆の話をすると、ソリッドで黒く塗るだけなのに高い請求をしてくる「上手いペインター」って、そう多くはない。(と感じている)

安く仕上げてくれるところは実は探すのが容易。その気になれば、ご自身で塗ることも出来る。
 
私は、「黒なんて簡単に吹けるよ」と言う人に仕事を依頼しようとは、全く思わない。
 
 
 

ソリッドの黒は、誤魔化しが効かない


 
誤魔化すとは響きが悪いが、当たり前の手法の一つ。
 
 
 

ハーレーで標準的に纏ってくる黒い塗装(外装)って、割と質感が高い。
 
これ前提。
 
 
 
 
□ 下地を整え仕上げる
 
物事には大体共通している、仕事の割合の大半が下地の仕上げという決まり事。
 
ちょっと、凸凹してるだけでも、単色の黒にすると、あら不思議。あららーって感じで見えてしまう。ほんと、わずかでも。
 
人間の目って、塗る前には気付かなくても、塗ってしまうと、すぐに気づいちゃうんです。塗ってしまうとね。
 
写真ではF値を上げまくってピントの芯をやや手前に合わせ低感度のシャッタースピードめちゃ遅でバチっと撮ると、やっと気づくレベル。
 
パテで修正するのだけど、皆が簡単にパテパテと容易くいうが、なかなかの職人技。下地の仕上げには、かなりの時間を費やす。
 
下地にはまだありますが、相手がソリッドのブラックになると、本来は全く気が抜けない神経質な工程。
 
 
□ 塗り
 
下地が仕事の割合の大半を占めるが、塗った時に綺麗に仕上がるための工程が下地。
 
では、塗る時はどうなる…..?
 
これも奥が深いのですが、ハーレーを塗る時に特に気を付けるのは、深い光沢を持たせる様にする事。
 
 
色だけに目が行くと気が付かないが
 
黒でも「安っぽい黒」「高級感のある黒」が存在する。

「高級感のある黒」とは、吸い込まれそうな、自らも映し出す事が出来る、鏡のような黒。漆塗りと表現したら良いかと。
 
 
黒の下敷きに他の色を塗る….など、黒の深みを増すテクニックは様々ですが。
 
共通しているのは、「クリアを厚く塗る事」
 
塗装一般では塗膜を「薄く、薄く」するのがセオリーとされる。
 
 
粉体塗装(パウダーコート)では、深い光沢が当たり前ですが、それは性質上、塗膜がびっくりするほど分厚いから。
 

タンクやフェンダーなど、有機溶剤を用いて、厚く厚く塗るとなると、最大に問題となるのが、使うクリアーの選定となる。
 
「厚く吹く事が出来る塗料」でないと、塗装欠陥が起こりがち。ブツが出たり、気泡が出たり。
 
僅かな様でも、一箇所それがあったとしても、それがソリッドのブラックで深い光沢を持たせると、すぐに欠陥がバレてしまう。
 
 
クリアを重ね、深みがあり、艶のあるブラックが生まれます。
 
 
もちろん、黒を拭いて、クリアーを吹いての各工程で、乾燥させ、研いでガン肌を消すのは欠かせません。
 
 
ここで問題なのが、厚塗りすると、ちゃんと乾燥させてシンナーを抜かないといけない。
 
シンナーは短時間のうちに90%以上が抜けるとされるが、厚塗りすると、あと少しが簡単には抜けない。
 
乾燥さすために、神経質な人は雰囲気温度が保てる乾燥路まで導入するほど。
 
一般的には、遠赤外線のような、電気式のヒーターで物体温度を上げる手法です。
 
 
 
ところが、十分に乾燥もさせず、納期優先で、乾いてもないのに、ささっと磨いて納品するような、けしからん仕事をする業者もいる。
 
乾燥されていないと、組み立てる側は非常に困ってしまうのです。
 
 
  
単純そうな黒い塗装ほど、追求するほど高価になる。
 
それは単純だからこそ、誤魔化せない。
 
料理で言えば。シンプルだからこそ素材の風味を..とかと似ているかと。
 
 
 
 
あとは、基本中の基本でもあるが、ホコリやダストを乗せない。
 
これも、ソリッドのブラックになると、とても神経質になる。その後、研いでどうにかなるものでもない。設備や、環境の問題。
 
 
 

 

これは一例。1981年式のFXB スタージスで、社外タンクのプライム状態で塗装を依頼した件。
 
社外品のタンクって、例外なく、荒ぶる凸凹状態で納品されますが、このタンクは無地の状態で見ても、かなり手強そうでした。
 
ご覧の通り、どう見てもデコもボコもない、美しい表面状態。このタンクは左右で分割仕様につき2つで、塗装を依頼して20万円以上でした。
 
普通考えると「タカーーー!」ですが、仕上げを見ると、納得せざるを得ない。塗膜には厚みがあり、カチカチに乾いていて、だから光沢がある。めちゃくちゃ、綺麗。
 
このタンクを受け取った側は、非の打ち所がない。その一言。施工したペインターさんからは、あるかもしれませんが、それはあくまで施工側の意見。
 
黒の中に、メタリックや、パールをいれることが出来れば、多少は誤魔化す事も出来て楽な仕事になるが、ただ、光沢があり、更に深みのあるブラックともなると、丁寧に仕事をする他にない。  

 
 
同じペインター氏による、他の塗装品もご覧ください。
 
 


当社で活躍する1000ccのデモ車両&代車。カスタムペイントも、お手の物。修理も、色合わせも、カスタムペイントも、出来る、両刀使い。
 
 

大掛かりな、トライクの外装も依頼しました。トライクでカスタムした箇所も元々の純正色で依頼。FRPの塗装は例外なく凸凹で、ピンと均一に仕上げるのが大変だったと思うが、見事な仕上がり。
 
 

カスタム車両のオールペン。この複雑な色合いをよく再現したなと。
 
 

塗装というのは、案外シンプルな方が難しい。
 
安いのは、それなりに訳がある。
 
高いのは、それなりに訳がある。
 
その辺りを把握した上で、どの程度の仕上がりで良いのかも含め、ご検討くださいね。
 
予算の兼ね合いもあると、なんでも最上の仕上がりが良いとは限らないし、拘って塗りたいのなら最上の仕上がりにしたい。
 
 
 
ちなみに、この記事を作ったのは、何かあったから…. ではないので、誤解なきよう。
 
 
 
https://www.45degree.net/order.htm
お問い合わせはこちらから。
 
 
posted by M.Yasuura
 
 
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