その使い方、シビアコンディションではないですか?

チューニングの最中、フェーズ2-1から間も無くエンジンから異音が出て緊急停止となったスポーツスター883のお話です。
 
補足までに、インジェクションの883スポーツスターです。
 
 
 
弊社でのインジェクション・チューニングはフェーズ管理を行なってます。保存データ名にそのフェーズ名を刻むことでどこで終わったのかが分かるようになっています。多忙な中で行うチューニング時のミスを防ぐ工夫。
 
フェーズ1-1は純正状態、またはチューニングに用いるベースデータ
 
フェーズ2-1以降は設定空燃比を一律固定し全域での測定を行いVE値を打ち込む
 
フェーズ3-1以降は任意の空燃比に設定し測定、確認と併せご要望の乗り味に合わす
 
フェーズ4-1以降は任意の空燃比に設定後の全開域でのLOAD TEST
 
フェース5-1以降は完成確認
 
 
 
フェーズ2-1以降なので、ほんと初めて間もない時のこと。
 
アイドリングの状態でA/Fが随分暴れてるな….修正しようとエンジンを停止。修正データを作り、リフラッシュ。
 
その後エンジンを再始動すると、エンジンから異音が生じている事を確認し、緊急停止。と同時にチューニングの中断を判断。
 
後に振り返ればアイドリングの状態でA/Fが随分暴れてるな….はこれが原因だったのね。
 
 
 
 

エンジンを開けていきますが…
 

あちこち、通常見られない腐食(サビ)が多数
 
 

あ、ここだ!
 

ということは、直上にあるタペットも、です
 

無残な姿
 

アンチローテーションデバイスも割れてしまい 
 

足りない破片は、カムに噛み込まれている
 
 

エンジンを開け始めた時から気になっているこれ。エンジンオイルが乳化しています。
 
 
通勤であったり、チョイ乗りしかしない車両に多く見受けられますが、一回や二回でこうなるものではなく、日々の常用で蓄積されます。(※1)
 
こちらの車両のユーザーさんは、割と短距離を通勤で使用されていたと聞いています。
オイル交換もご自身で行なっておられたそうですが、オイルが乳化していたのには気づいておられたとか。
 
エンジン内部で発生した水分を飛ばすにはエンジンオイルの温度がそれなりに高い状態になる必要があり、エンジン温度ではなく、油温が90℃以上という。その距離は空冷のハーレーの場合ですが20~30キロほどと認識しております。(※2)
 
20~30キロほど走らないとエンジンオイルの温度はそれなりの温度にならず(実際に測定してみると、想像しているより上昇は穏やか)
 
オイルに水分が含まれた状態になり、結果として乳化に繋がるわけですが、こうなると「エンジンオイルだった液体」です。
 
 
前述のような用途で運行される場合は「シビアコンディション」に該当し、通常定められた期間や距離よりも、早く(!) 交換を求められています。
 
シビアコンディションに該当する場合は、もっと頻繁にオイル交換をしなければなりません。それはメーカーが基準を引いてる距離や、時期よりも早く行なうこともあり得ます。どのくらい、ユーザーがシビアに使っているかによりけり。
 
 
しかし…..ここまでエンジン内部のあちこちに乳化した液体が残された車両は初めて見ました。
 
 

加え、カムとタペットがこれだけ損傷していても、カムシャフト直下に金属片などが多数存在してないことから、カムとタペットが損傷し初めてからは時間がそれなりに経過していると見受けました。
 
※1 / ご自身の車両が宝物故に、気を遣いすぎて乗りもしないのにエンジンを再々始動させても、こうなることもある。走らないのならエンジンは始動すべきではない
 
※2 / 気温の低い冬季の運転、排気量の大小、オイルクーラーで常時エンジンオイルを冷却している車両においてこの限りでは無い。あくまで目安。
 
 

さて。修理に取り掛かる訳ですが、カム周り。この中でスポーツスター のカムは標準的にギアードライブ仕様


ピニオンギアとカムシャフトとのバックラッシを適切に管理するため、メーカーではカムシャフト一式と、ピニオンギアがセットになった一式の販売となっているので、一個のカムが損傷してしまっても、全て交換しなければ部品入手が出来ない。
 
しかし、これって実はめちゃ親切仕様に変わったからこうなったのです。
この二つのどちらかは間違えようがなく、それさえ適切にしておけば、全く問題のない補修部品が入手できる。
 
 

99年より前になると、それぞれのカムでサイズ別販売されていました。
 
純正のカム4本とピニオンギアの一式で10万以上、なかなかパンチのある部品額ではあります。
 
社外のものはそれよりは安価に入手可能ですが「883エンジンのキャラクター」を考慮すると、弊社としてご案内できるものがない。
 
加え、すでにチューニングなどを済ませた、または純正状態である場合はチューニングが必要となってくる場合もあり。
 
その辺りの選択は慎重に行う必要があります。
 
お問い合わせはこちらから
https://www.45degree.net/order.htm

最近は業者様含め、圧倒的にLINEでのお問い合わせが多いです
https://page.line.me/mqi1292y?openQrModal=true
 
電話ではすぐに対応できないことが多いので電子的なやり取りでお願いしますね
 
Posted by M.Yasuura