チューニング途中にエンジンがぶっ壊れる話 / 2017MY FXSE プロストリート

前回の2017MY FXSE プロストリートの後編。
 
チューニング途中、しかも、終盤でエンジンがぶっ壊れてしまった話です
 
異音がしだして、タダゴトではない凄まじい異音で直ちに中止。
 

お客様に了承を得て開けてみたら結果はカム周りのトラブルでした。
 

 
 

(GoogleChromeブラウザ推奨、Safariではご覧頂けません)
 
 

 


カムのダメージ、わかりますか?
 
 
 

ここですね。結構なダメージ。SE-255カムシャフト逝ってます。が、同じものにかえます。必ずしも変えることがよきではない。このナナメに傾斜したエギゾーストでは顕著にね。
 
 

実はSE110エンジンあるあるなトラブル。
 
 
 
一部のSE110ユーザーさんの間では知られてる話かも。
それでもその人たちはそれに乗ってるので、そろそろかの?という具合で。
 
私見ですが、SE110エンジンに備わるスクリーミンイーグルのシリンダーヘッドに装備された強烈なバルブスプリングが原因と。そのバルブスプリングを動かす直接的な負担はタペットやカムに皺寄せが行きカムシャフトの剥離やタペットローラーベアリングの破壊を招くものと。
  

(インテークバルブのバルブサイズは53ミリほど)
 
そもそも強烈なトリプル仕様のバルブスプリングをやめ、コニカルスプリングに変えればいいのだがミルウォーキー以降のように4バルブにはせず、2バルブのまま拡大したバルブを用いたスクリーミンイーグルのシリンダーヘッドは昔の親父カタギの色々をまとった様々。これと兼ね合いがつかないことで現在案内できるものはないのが実情。行き過ぎた強化仕様も良くないのよ。絶対にどこかに皺寄せがある。
 
ただ、この強化仕様はユーザーが任意に行なったことではなく、メーカー標準仕様で出荷されてるものだから、ちょっと困ったちゃんではある。じゃ、私にそれをどうにかする熱意があるか?と聞かれたら、それはない。SE110のエンジンを搭載したものはそれはそれで確立されたブランドがあり、魅力もある。10万キロ以上走っても適切な処置を行うことで壊れてない個体もある。上手に付き合っていったらいいと思う。
 

にしてはちょっと逝くには早すぎ。概ね7万キロくらいであるトラブル。もしかするとオイル管理が不十分だった可能性が、と過ぎる。加え、爆音過ぎてエンジンから発する異変の始まりに気付けなかった可能性も否定はできない。
 

いろんなことを考えるのだけど、あまりに異音が酷かったこと、もしかしてフライホイール逝ってる??も払拭できず。分解前にプラグホールからスコープで覗きレンズを通しシリンダー壁に嫌な痕跡も見受けられたことからカム周りと併せエンジン腰上も開け確認をすることに。
 

異物を噛み込んでシリンダーにダメージあり。これは変えよう。
 
まともにこのシリンダー買ったらどえらい高いものですが、弊社に奇跡の中古シリンダーあり。新車間も無く117にボアアップされたことで取り外された新品に近いものです。
 

ピストンはSE110には標準装備のマーレピストン。2014年以降から鋳造から鍛造に変わりました。多少傷はあるがさすが。これは再使用しよう。
 

ピストンリングは当然の交換ですが、これも当然マーレ製のウルトラフラットリングです。が、ハーレーを通したらウルトラ高額フラットリングで。今現在で2シリンダー分なので37,258円×2=74,516円と消費税。マーレ社がハーレーに卸してる製品なので横抜きはできません。仕方なし。(うちで販売してるピストンキット用のウルトラフラットリングはこんなにウルトラ高額ではないのでご安心を。)
 

価格の話になると、すぐに社外品への置き換えの話が出がちですが、それは哀れなこと。諦めて純正部品でウルトラフラットリングを購入しましょう。
 

で、次にシリンダーヘッド。ここはSE110のヘッドワークをすることでどのくらい変化があるのか興味があったので申し出ました。
 

 

これですね ミネリ社のシートカット一式。 
 

チャンバーを見てハーレーの他のヘッドと明らかに違うのを見つけ
 


バルブと接触する45°のところだけ、凸ってます。
 
これについて、様々なシリンダーヘッドをご覧になってきた人に質問したところ 
 

皮肉をこめた返しにお察しの通りですが、それじゃないでしょ、ということ。
 
 
このシートの形状はシートカット等はせず(事実、した痕跡もない) シートリングを打ち込んで、エンジンを動かすことによって当たりを出すやり方と見受ける。その証拠に当たりの幅が結構違う様子も見てとれた。
  


 
 

そこから凸を削りシートカットする訳ですがカッターが適切なのか、そもそも削り過ぎにならないか?検証しましたが結果論、問題なし。綺麗に当たりが出ました。
 

そんなこんな、ヘッドワークを終え
 

ここで検証
 

この、さほど出力を期待しない仕様でこの成績、99馬力。吊るしのSE110でカムもSE255のまま。この成績は、なかなかじゃないですか。チューニングしてる人ならワンテンのソフテイルに斜め傾斜した見た目重視エギゾーストでこんなに馬力が出るわきゃないのはご存知だと思います。
 

比較したらとてもわかりやすい。エンジン弄ったのではなく、綺麗に組み直したってニュアンスかな。走ってみたら物凄いよく走るのがわかる。
 
歯切れ感も増し増しでまるで排気量が上がったかのような錯覚も覚える。 

改めて「基本が大切」ってことを経験しました。
 

Posted by M.Yasuura