(当記事はブラウザ Google Chrome推奨記事です)
馴染みのお客様から頂いた案件。昨年2024年6月の出来事。
従兄弟さんの車両でエンジントラブルが起こったのだとか。
「プッシュロッドが調整式のアジャスタブルに変わっていてリアのプッシュロッドが曲がっている」との事前情報があり、「むむ?」 と。
何もなければプッシュロッドなんて簡単に曲がるものではないから、もちろん他の原因が起因している可能性は疑います。
強度的に弱いものなら使用過程で曲がってしまうこともあり得なくもないので、まずはどちらにせよ交換必須なプッシュロッドを入れ替えて様子を見るも、リアに圧縮がかかってない状態なのを確認。コンプレッションテスターを用いなくても、プラグを抜いて指を押し当ててすぐにわかってしまうほどスカスカでした。
この時点で少なくともリア側のエンジン腰上まで開けるのは確定事項となり。
ロッカーカバーを開けてみたら、なんとバルブスプリングがバラバラになっていました。強化仕様のものが入っていて、それが砕けていた。わざに変えたものが起因してトラブルが起こるのは悲しいね。
バルブスプリングが粉々ならバルブガイドまで損傷。ステムシールを取り付けするところに大きくダメージがあった。
バルブガイドは変えなきゃいけません
粉々になったバルブスプリングは社外品に交換されていたもの。どうせ変えるならコニカルのバルブスプリングにしましょう。
コニカル仕様は従来のアウタースプリング・インナースプリングと構成されていたものから一つのスプリングで十分になる。加えバルブスプリングが円錐型になることでアッパースプリングシートが必然的に小型化できるメリットは軽量化にある。往復運動を繰り返す部品の軽量化は今更語るほどのことはないでしょう。この辺りの要素でバルブのサージングを抑えるがスプリングそのもので強化するものではないことから、カムやそれを支えるベアリングへ優しい。それでいて(バルブの重量にもよるが)7000回転付近まで回してもサージングを起こさないので下手に強化するよりも合理的。
バルブスプリングを強化すると、それを動かすためにもロスが起こり、バルブスプリングを動かすロッカーアーム、支えるタペット、タペットと接するカム、カムを支えるベアリングへダメージを引き起こしやすい。単純に強くするのはライフを短くすることも伴い諸刃の剣とも言える。スプリングそのものはなるべく優しい状態でありつつ、サージングを起こさない性能と要素がとても大切。クラッチ同様に、やりゃ、ええってもんじゃないってことね。クラッチは左手が悲鳴を上げるが、エンジンの中で悲鳴を上げてるものは壊して気づく。モディファイによって変えるならエンジンの最高回転域はこのくらいの仕様にするからこのスプリングが要るよね、という選定がいる。
この数値以下ではライフは長いが、この数値以上では何万キロくらいで損傷を起こす、というデータは持っている。
ちなみにこの商品は1984年から2004年までのビッグツインで対応可能な商品。2005年以降では標準的にコニカル仕様のバルブスプリングになっている。(スポーツスターでは1986年から2003年まで対応可能。2004年以降から標準的にコニカル仕様に変わっています)
シリンダーヘッドを分解した段階でシリンダーも外すのは既定路線。エボ以降のビッグツインではヘッドを取るとシリンダーまで解けてしまうことから、ガスケット変えるのにシリンダー引っこ抜く訳で。シリンダーベースガスケット交換に併せピストンリングも変えなきゃいけませんが、開けてみたらTC88からTC95へボアアップされた車両でしたが、なんと、在庫あり。速攻で変えます。
リングギャップの測定も忘れずにね。
シリンダースタッドもこのタイミングで交換。エンジン温感時にオイル漏れを引き起こす要因をなくすためです。
バルブガイドを交換するとシートカットは必然。バルブガイドに損傷があったのは一本だけですが全て綺麗にやり直しました。ミネリ社の3面同時カットで最小カットで行った。
シートカット後の当たりもバッチリです。
バキュームテストも良好
車両入庫、お預かりから2日。速攻で修理した案件でした。
お問い合わせはこちらから
Posted by M.Yasuura