理想的なセッティング条件で見えるエンジンの奥深さ

2007年式FXSTCのエンジン組み立て、セッティングにかかります。
 
 
P0505のエラーコード有り。アイドリングせず幾度となくエンジンストールの事態・・・。エンジンが止まってしまうので止まらない程度にアクセルを保ったまま、完全に停止すると、アクセルを放してアイドリング出来る。この作動状態なら、なにかある!と思い、探っていました。このP0505エラーコードはIACの故障そのもの以外にも様々な要因で出てしまうエラーコードです。IACが異常な動きをするとき、もしくはしてしまう時、にも出ますが、話が長くなるので省きます!ハブ来ます!省略!
 
アイドリング不調を改善した2007年式FXSTCは、眠たそうに500rpm付近からモっタモっタモっタモタモタモタと、えぇい!と思ってしまうほどじれったく妙に低い回転数から目覚め不機嫌そうにアイドリングする様子から、エンジン始動と同時に力強い音と共に「ズダダン!!!いゃっほー待ってました〜v(=^0^=)v」と目覚め1150rpmでアイドリングを軽快に刻み・・・・。そこから徐々に回転数は下がっていきます・・・・。
 
 

持ち込まれた時には調整されていなかった「スロットルブレードの全開調整」も的確に行い、スロットル100%全開で・・・
 
 

セッティングに挑みます。
 
 
 
 

今回は(も?)、「パワービジョン」を用います。以前のフルコン時があまりに不安定だったようで、安心して走りたいとのご要望と、各パターンマップをご用意する事から「パワービジョン」をお勧めしました。安定した純正コンピューターを用い、味付けは純正っぽくないよう、アクティブなセッティングを、と、ご注文頂きましたので、そのように仕上げます。
 
 
ここで、セッティングを出し、パワーチェックをかけてみたグラフが出ました。
 
 
気になりますね。
 
 
それがこちら
 
 
 

ワン
 
トゥ
 
スリー
 
 

 
 
 
 

青いグラフは、以前のデーターを示し、赤いグラフは今現在。
それぞれの最高値、馬力が最大20馬力 トルクが最大2.8キロの差が出ました。
 
先日からのブログを熱心に読まれている読者様には説明不要だとは思いますが、一応書いておきます。
 
「イコール・パワー」に繋がるような「部品交換」は一切、しておりません。
 
すべて、あるべき姿に戻し、丁寧に組み立てただけ。
 
このグラフの違いは、同一エンジンで出たグラフには見ように見えないでしょう。ボアーアップをしてもこれほど違いは出ません。これは正確な事実ですのでそのまま飲み込んで下さい。しかし、特別スペシャルなセッティングを行なった訳でもないのです。セッティングをシャーシダイナモで行なっている人なら解って頂けると思いますがここまでのパワー差を出そうとすることが、逆に難しい話です。
 
このグラフ差は、とても良い好例なのですが、エンジンという土台がどれほど重要かという事です。
 
ふにゃふにゃの土台に、カチッとした建築物を作っても、下に埋もれていくか、バタンと倒れるか・・・のようなもので、エンジンのコンディションがとても大切であり、そのコンディションの上にセッティングは成り立つもので、そのコンディションが良くないと、セッティングそのものは良いものでも、走っている時の歯切れ感、パルス感、トルク感、そしてこのパワーチェック時のグラフなどは良くない結果になります。それはセッティングが悪いのではなく、「エンジンの調子が悪い」のです。
 
結局は、サブコン・フルコンなど、セッティングと言う話はありますが、これは「上辺の話である」という事である。 と同時に、以前ワタシメが、同一のセッティングデーターはない、と書いた通り、同じエンジンでも、判りやすく言えばエンジンの「アタリ・ハズレ」があるので出来ないのです。最も丁寧で、当たり前のセッティングは、そのエンジンに合わせたセッティングを施す事。
 
 
 

エンジンという土台がどれほど重要かという事で、カム交換、ヘッド交換、交換ばかりお考えの人へのメッセージ。今ある各エンジン部品が悪い訳ではありません。それぞれの部品がきちんと機能していけば、驚くほどの状態に生まれ変わります。交換するのを否定しはしません。しかし、大切なのは「バランス」です。カムのプロファイルをみても、ヘッドの特性を考慮すると全く違うものにすらなります。交換するばかりが良い結果だとは限りません。
 
 
 
 
 
 
  
さて、今回の様に、エンジン内部を綺麗にして、きっちりと組み直した後にセッティングをしていくというのは、「最も良いセッティングの理想的な条件」が整っています。
 
こうなると、エンジンをやり直した後の、セッティングの前後でどれほど開があるか・・?となりますが、馬力でいうと3馬力・トルク0.6キロ程度で実は大して開きがありません。やはり、エンジンのコンディションありきのセッティングという事です。
 
大して開きがないからセッティングはしなくて言いかと聞かれると、ソレとコレは違う話で、大切な事なのでやらなければなりません。
 
ムズカシイですね(^_^)
 
 
ところで、今回は2マップ作っています。
 
 

パワービジョンは、合計6個までのセッティングデーターが保存出来ます。
この2007年式FXSTCさんは、時々マフラーを変えて走るとの事で、交換されるマフラー、それぞれのセッティングデーターを作っています。そして、パワービジョンのタッチパネル上で、容易にデーターを入れ替える事ができます。
 
シャーシダイナモで作った固いセッティングデーターを、それぞれのマフラー交換時に入れ替える方法は最も確実に変わり、安心な方法です。
 
パワービジョンで出来る容易なマップ入れ替えこそ、パワービジョンの利点であり、キャブレターの頃はジェットの入れ替えで機械的な作業がありましたが、パワービジョンで行うマップの入れ替えは、カプラーオンで、本当の意味でインジェクションとして遊べます。もちろん、それは純正状態に戻す時も含めてです。
 
 
さて、セッティングもあと少しです。
今回はとことん納得がいくまで・・と思っていましたが、十分な結果になりました。仕上がり、オーナー様に乗っていただく時が少々楽しみです。